はじめに
私はからだの専門家として日々様々なクライアント様の施術をさせて頂いております。ここでいきなり質問ですが、からだの専門家がクライアント様の身体の問題を調べさせていただく中で、身体に直接触れること以上に大切にしていることは何かご存知でしょうか?
それは問診です。
問診とは「現在の病気の経過・状況などを尋ねること」なのですが、その中で既往歴・職業・趣味や家屋状況などクライアント様のナラティブ(現在に至るまでの経験についての語り)を事細かく聞いていきます。身体に生じる問題は偶発的に生じるわけではなく、ほとんどの原因は生活の中に隠されています。問診はその隠された原因を見つけて、クライアント様の身体の状況を把握する上で最も重要な評価となります。

そして、たくさんのクライアント様を問診させて頂く中で「職業」と「身体の問題」と直接的に関与しているケースが多いことに気づきました。
今回のコラムではそんな私自身の経験を通して「職業病」について記載させて頂きたいと思います。
仕事をしている方はもちろん、主婦の方や定期的に行う趣味がある方にも有益な情報となります。また、最後に職業病に対する対策としてアクションプランを提案させて頂きますので、是非最後まで御覧ください。
職業病とは
下記に記載したような職種ごとのあるあるを職業病と呼ぶ事があると思います。
- 看護師が血管が浮き出ている人を見ると、注射を打ちやすそうと考えてしまう。
- 理学療法士がフライドチキンを食べる時にチキンの関節を観察してしまう。

しかしこれは職業病ではありません。正確には職業病は
特定の職業に従事することにより罹る、もしくは罹る確率が非常に高くなる病気の総称です。
厚生労働省は職業病を大まかに下記のように分類しています。
- 業務中の負傷が原因の病気。
- 物理的な原因による病気
(例:赤外線にさらされる業務)。 - 身体に過度な負担がかかる作業が原因の病気。
- 化学物質が原因の病気。
- 粉じんを吸い込むことが原因による病気。
- 細菌やウイルスが原因の病気。
- 発がん性物質が原因の病気。
この中で最も頻度が多いのが「身体に過度な負担のかかる作業が原因の病気」と言われています。
今回のコラムでは職業病の中でも「身体に過度な負担のかかる作業が原因の病気」について深掘りしていきたいと思います。
そして、厚生労働省は身体に過度な負担がかかる作業が原因の病気は以下のように分類しています。
- 身体に過度な負担が持続的にかかるような重激な業務。
- 重量物を取り扱う業務、不自然な作業姿勢により行う業務、腰部に過度な負担がかかる業務。
- 打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務。
- 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務。

現在あなたが従事している業務は上記の内容に当てはまりますか?
当然当てはまる人もいれば当てはまらない人もいると思います。しかし、上記の分類に当てはまらなくても一定の決まった動きや姿勢をとらざるを得ない仕事は身体への負担となります。そのため、全ての職業に職業病があると言っても過言ではないでしょう。
一生のうち仕事に費やす時間の割合
職業病について考える上で、私たちが定年を迎えるまでにどれくらいの時間を仕事に費やすかを理解する必要があります。
一般的に4年制の大学を卒業し就職する年齢は22歳です。22歳から定年の65歳まで週5日間、1日あたり8時間働いたと仮定すると
私たちは89,650時間という膨大な時間を仕事に費やすことになります。
この数字はあまりイメージしにくいと思うので、毎日7時間の睡眠時間を確保したと仮定すると
休みの日などを含めて起きている時間の約34%もの時間を私たちは仕事に費やしていることになります。驚きの数字ですよね。だからこそ仕事が身体に与える影響は大きいのです。
デスクワーカーや運転手は89,650時間座らなければなりません。逆に調理師や工場業務の方は89,650時間立っていなければなりません。デスクワーカーや運転手が腰を痛め、調理師や工場業務の方が首や腕を痛めるのは納得がいきます。

連続1時間座り続けていると寿命が22分縮まると言われているくらい座りすぎは身体によくありません。デスクワーカーや運転手は寿命を削りながら働いているといっても過言ではありません。
座りすぎに関する詳しい内容は過去に出したこちらの「長生きしたければ座りすぎをやめなさい」と言う健康本の要約動画で配信していますので、座りすぎに関する健康被害の内容が気になる方はそちらをご覧ください。
立ちっぱなしも同じ姿勢を長時間続けているという観点では座りすぎと同じように健康によくありません。
職業病の正体
人間には約400個の筋肉と約206個の骨と約265の関節があります。

理想的な身体の使い方は生活の中で全ての関節や筋肉がフルに活用できている状態です。逆によくない身体の使い方は同じ運動や姿勢の連続により一部の関節や筋肉しか使わない状態です。
多くの職業は一定の決まった動きや姿勢があり、そのことが身体の一部分の関節や筋肉に負担をかけることにより慢性的な腰痛、肩こり、首の痛み、姿勢の崩れを引き起こします。これこそが職業病の正体です。

仕事じゃなくても毎日同じような家事をこなす主婦や趣味で毎週ゴルフをするといった方も身体の一部に負担がかかるという点で同じことです。
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